訓練プログラム プログラム紹介

①「 抑うつと無力感:戦術と技術」
  トレーナー:ラルフ・モーラ(レイノルド・アーミー・コミュニティ病院)

このワークショップは、抑うつと、特に無力感のテーマを扱う。まず最初に、抑うつについて概説し、それから無力感という概念につなげる。治療では、個々の患者の変化への準備段階を支持する必要があることに注意を喚起したい。変化への準備段階の輪郭を描き、これは患者が変化への準備ができることを狙った特定の治療的戦術・技術を、決定する道筋として用いられる。これらの戦術と技術は、行動学的、認知行動学的パラダイムに負うところがかなりあるが、これらのパラダイムが精神力動的なねらい・目的をいかに補うかについても説明する。プログラムの全体的な目標は、さもなければ患者の抵抗とみなされてしまうような事象への対応に役に立つ戦術と技術のいくつかを参加者に提供することにある。また、患者へのより全体的なアプローチを提供することを目指しており、それは通常用いられているよりもずっと協力的で教義的なやり方になる。最後に、統合された行動学的健康プログラムを紹介する。これは、メンタルヘルスの機関で普通は出会わない心理学的な問題を持つ身体疾患の患者への対応として有効である。

② 「心理力動的外来集団精神療法:PTSDとうつ力動からの解放」
  トレーナー:橋本 和典(国際基督教大学)
        髭 香代子(PAS心理教育研究所) 

 IADPが向き合い続けている東日本大震災後の大規模PTSDや「うつ」からの解放には、力動的集団精神療法が欠かせない。また、我々の専門とする青年期困難患者が頻繁にあらわす自殺未遂、自傷行為等の自己破壊的行動化の奥にも、複雑性/累積PTSDやうつが存在する。本ワークショップは、ロールプレイなどの体験演習や小講義を用いて、1)見えにくいPTSDや、うつ力動を可視化し、的確な査定(トリアージ/セラグノーシス)を行うための基礎理論を学ぶこと、2)その治癒を促進する力動的集団精神療法の実践イメージと基本技法に習熟することを目的とする。力動の世界に初めて触れる初学者の方から、ベテラン臨床家の方まで、心の重荷を解放し、腹の底から元気になる力動的集団精神療法の世界への第一歩を、熊本から始めてみましょう。 

③ 「『僕の古い友達、暗闇君、こんにちは』―青年のうつに取り組む」
“Hello Darkness, My Old Friend”-Working with Adolescent Depression
  トレーナー:セス・アロンソン(ウィリアム・アランソン・ホワイト研究所 ファカルティ)

 青年期のうつは、その絶望の中にある青年の窮状を捉え、喚起させられるかのように様作家や詩人によって描かれてきた。シェークスピアのハムレット、サリンジャーのホールデン・コールフィールド、シルビア・プラスの『ベル・ジャー』は、みなうつの青年のありさまである。精神分析学の文献、フロイト、アブラハム、そして後には、スピッツ、ボウルビー、アンソニーは、診断と治療法についての理解に貢献している。またよく知られているようにアーロン・ベックと彼に続く人々によって開発された認知療法もまた、治療戦略の発展において非常に貴重である。このワークショップでは、青年期のうつの広がり、この年齢層に「当たり前に起きる」うつと精神病理としてのうつを何によって識別するのかを探る。参加者は、診断について学ぶ。また、個人療法、集団精神療法、家族療法を用いたときの、多様な治療的反応についても検討する。

④ 「対人援助職のための応答構成入門」
  トレーナー:能 幸夫(PAS心理教育研究所)

 力動的視点を据えた精神医学、精神看護学、心理療法、ソーシャルワークは、人と人が心理的にコンタクトを取り、相互作用が生じる場における対話や応答がそのまま治療的あるいは援助的な介入になっていきます。わたしたちは、どのように生きた対話や意味ある応答を創りだしているのでしょうか。
 応答構成訓練は、具体的には、時間をとめて、ある場面における患者さんやクライエントの言葉を前にして、自分の応答を構成していくプロセスを吟味し検討していく訓練です。  今回の入門講座の対象は、医師、看護師、臨床心理士、ソーシャルワーカーといった対人援助の専門職の方々です。
 ともに楽しくそして有意義な訓練にしていきましょう。
 *:参加者には事前に基本テキストを配布する予定です。

⑤ 「プレ・セラピィ技法:SMGとSET」 
   Pre-Therapy Technique: SMG and SET
  トレーナー:
  SMG:花井 俊紀(PAS心理教育研究所)・橋本 麻耶 (PAS心理教育研究所)
  SET:中村 有希(PAS心理教育研究所)・荻本 快(相模女子大学)

 助けの必要がありながら、相談に来られない、相談への動機がもてない人々に対して、心理療法への準備態勢を整える処方がプレセラピィである。我々は2011年、東日本大震災以降、引きこもり、助けを拒絶する人々に多く直面する中で本処方を展開してきている。プレセラピィは、心の機能を活性化し、精神内的な安全感を確かなものにすることで、自分を育て、鍛えることに抵抗する力や無力感を緩和する。本訓練では、Story Making Group(SMG)、Socio-Energetic Training(SET)2つのグループ処方を紹介する。参加者は実際に2処方を体験し、現代におけるプレセラピィ処方の必要性と、2つの各技法の臨床的意義、そして本処方における基礎技法を学ぶことが目的である。

⑥ 「力動的精神看護介入技法、-セルフケアの促進のための力動的看護面接-」
  トレーナー:岩切 真砂子(慈圭病院)
        寺岡 征太郎(東京医科大学)
        宇佐美 しおり(大会会長)

 精神看護において、オレムーアンダーウッドのセルフケアモデルは、人間関係の看護論を展開したヒルデガード・ペプローに続き、日本では普遍的に用いられるケアモデルとなってきています。そしてこのケアモデルは、脆弱性ーストレスー対処モデルと共に、患者の理解のために精神力動理論が用いられていますが、これについては正確に理解されていません。また、オレムーアンダーウッドモデルでの患者のセルフケア促進のための看護過程の展開においては、力動的看護面接が変化の要となっているにも関わらず、その方法論については個々人の看護師が自分の考えで展開しているにとどまっています。そこで、今回、オレムーアンダーウッドモデルを正しく理解、活用するために、①精神力動理論とオレムーアンダーウッドモデル、②セルフケア促進のための力動的看護面接の技法、③患者・家族・看護師集団の凝集性と機能を高めるための看護者の介入技法について、講義、事例検討、ロールプレイを通じて深めていきます。

⑦「組織開発の力動と介入法」
  トレーナー:小谷 英文(PAS心理教育研究所)

 組織開発の理論と実践は、行動科学だけでなく、精神分析および集団精神分析の理論によって大きく発展を遂げてきている。エグゼクティブコーチングもまた、その恩恵を受けてきている。私のアプローチは、力動的心理療法、集団精神分析、そして一般システムズ理論から再構築、統合したものである。  このプログラムは、心理療法の仕事が効果的にできるように、医療専門家や対人援助従事者の組織に焦点を合わせている。特に陰性治療反応(NTR)を伴う困難患者の力動的心理療法は、それが行われる機関を様々に揺るがす。機関の環境全体が心理療法の仕事を揺るがし、きわめて破壊的な影響をもたらすこともある。どのような組織で働く心理療法家も、安全に自分の心理療法バウンダリーを守るために、リエゾンワークを行う必要がある。心理療法を効果的に行うには、その組織の中に、充分に心理学的心性に馴染んだ環境が必要である。力動的心理療法家としては、心理療法によって患者の治癒を助けるとともに、心理療法にとって最適の環境を組織内に開発していかなければならない。 本プログラムでは、個人と組織の相互作用ダイナミクスの基礎理論と、それを生産的かつ創造的に使えるようになるための分析と介入の手法を学ぶ。
 *各参加者は、ご自分が心理療法もしくは関連の仕事をしている所属機関で組織展開上にぶつかる問題を事例報告メモの形で準備してご持参下さい。