訓練プログラム ワークショップ紹介:IADP2014

困難患者の治療に対する試み‐治療理論における攻撃性の意味

トレーナー:ハロルド・スターン(個人開業精神分析家) 

 本ワークショップでは、最終的な治癒に導く可能性のある様々な治療方略を理解し、首尾良く実践することを可能にするアプローチの基礎となる具体的な理論とそれに関連する技法について論じる。
 若い頃の経歴として、Sigmund Freudは精神病の治療に強い関心があったことが知られている。しかしながらその後、彼は精神病、統合失調症そして自己愛の部類に通例として入ってしまうその他の様々な人格障害者の治療の方法として精神分析を用いることに対してとても悲観的になった。フロイトが彼らの治療に対して悲観的になったのは、このような障害を持つ人々にとって、セラピストとの間で対象転移を形成することができないことを発見したからである、つまり対象というのは彼にとって外的(外側にある)というより内的(内側にある)なものであるためである。
 後年、私の師であるHyman Spotnitzは、相当量の研究の後に、このような困難患者に対する治療の方法を構築した。それは、自己愛転移を、自己愛神経症の体系的な解消を転回する基礎として用い、そしてそれが最終的には患者の治療を成功に導くというものである。
 この治療の最終段階を成就させ、完全な治癒をもたらすには、われわれは一連の新しい特別な抵抗と転移を活用しなければならない。この方法は、われわれ自身が、自己愛的な転移、そしてセラピストの個人的な体験も含む自己愛的な逆転移のプロセスになじむことが求められる。
 治療は様々な段階を通して前進を引き起こす。治療が展開するにしたがってセラピストは抑圧された患者の攻撃性を患者自身にとって安心感が持てる形に導く。これは大抵の患者にとって初めてのことである。またこれによってすべての思いや感情、記憶を言語化し、前進的なコミュニケーションにつなぐことが可能になる。これらの段階はワークショップの中で説明する。

※ このワークショップは日英通訳付きで開催されます。

 

精神分析的心理面接法: 精神分析的心理療法の導入と展開促進技法

トレーナー:小谷 英文 (精神分析的システムズ心理療法師)

キーワード:クライアントになること、精神分析的動機づけ、自己と自我の相互作用力動、三分論面接技法、エディプス面接技法参加者:力動的心理療法初心者、訓練生、ヴェテラン
方法:教授+体験
目標:心理療法を始め効果的に展開する時に行き詰まるポイントに関わるあなたのミステリーを解き明かす。その技術的行き詰まりを解消する特定の面接法の習得。 

  

The Challenge of Helping Children and Adolescents and Their Families After Traumatic Loss

トレーナー:Seth Aronson (Faculty, William Alanson White Institute)

 In this workshop, we will explore the challenges of helping children, adolescents and families after a traumatic event. The events in Japan of 3/11  were devastating on the individual, family, community and national levels.The effects are far reaching and require thoughtful intervention. Any trauma involves a loss, and for children, such losses may include, loss of a parent or family members, home, school, and sense of security necessary for secure attachment. Treatment models must also take into account developmental differences,  history of loss, separation and attachment prior to the traumatic events.
 We will discuss  the various components necessary for intervention:
  -crisis intervention focusing on immediate needs
  -individual therapy that focuses on coping strategies, dealing with the losses
   incurred, repairing attachment
  -group therapy to consolidate peer support, create cohesion, impart information
  -school and community based intervention to address ongoing support for
   traumatized adults, teachers and parents and help them with the follow up that
   is necessary 
 We as mental health professionals can use our expertise and knowledge so that these children, adolescents and families can be helped  to address trauma and grief reactions, while we help to restore stability, increase communication and promote awareness with them- and the communities around them- and in this small way, instill hope.

※ このワークショップは英語で開催されます。

 

PTSDの治療におけるレジリエンス(心の弾力性)

トレーナー:ラルフ・モーラ(レイノルド・アーミー・コミュニティ病院 クリニカルサイコロジスト) 

 このワークショップではレジリエンス(心の弾力性)と心的外傷後ストレス障害(PTSD)の要件について検討する。レジリエンスは、今現在PTSDに苦しむ人においても、習得できるものであると筆者は提言する。さらに、PTSDというのは慢性的な状態ではなく、身体的にトラウマを受けた状態を精神的に解消しようとする試みとして、通常で自然な自己治癒の過程であることも示したい。レジリエントな人(心の弾力性のある人)を、よりリスクが低い群とするのは、彼らは不安に対処する能力が高く、トラウマに直面しながらも希望を維持する力があり、起きたことに対して意味を見出す能力があるためである。実際、レジリエントな個人は現在の苦難から脱却し、個人的、社会的そして宗教的価値に基づく、より広い現実の文脈にそれを置き直すことができる。これは、レジリエントな個人がトラウマを受容することができるということよりも、外傷が起こるということは他のことが起きうる可能性と同等であるということを受容し、その意味は、その個人が外傷を通常のこととして捉えることができ、トラウマによるさまざまな反応を受け入れ、有害な効果を制限するために行動することができることと共にあるのである。それから筆者は、PTSD治療の目標をいくつか提示し、併せてそれらを達成するための具体的な方略も提示する。

※ このワークショップは日英通訳付きで開催されます。

 

応答構成ワークショップ

トレーナー:能 幸夫(PAS心理教育研究所 所長/湘南病院相談室 室長)
トレーナー:橋本 麻耶(PAS心理教育研究所)
トレーナー:伊藤 裕子(PAS心理教育研究所)

 応答構成訓練のねらいは“発話と傾聴の過程で自己を拡げ、自我が自由に働く空間を拡げる基本作業を持って、自分自身の内的世界と相手との交差する「間(あいだ)」の領域に安全空間の生成と保持の営みを学習し、身につけること(小谷,2013)”である。
 セラピストとして捉えた「今ここで」のミクロの瞬間にクライアントのイントラの世界の入り口がある。話している「こと」をマクロ的に理解するだけでなく、話しながらも蠢いている「もの」に関心を持ち、共にいることができるような対話の空間を作り、クライアントのもつ内的世界の力動に参与しながらセラピストとしての内的体験に率直でいることがどれくらいできているだろうか。臨床家が臨床家であり続けるための問いである。
 応答構成の訓練では、面接のある瞬間を切り取り、セラピストとして捉えた情報とエネルギー、クライアントの感情、セラピストの感情を取り出し、自己空間そしてより広いグループの空間の中で吟味検討することでセラピスト自我を鍛錬する。初心からヴェテランまで臨床経験を問わず、一日体験道場へ入門あれ。